ヘイトフル・エイトを見た(ネタバレあり)

Netflixで配信されている映画『ヘイトフル・エイト』を見た。

ãhateful8ãã®ç»åæ¤ç´¢çµæ

この映画は3ヶ月ぐらい前に途中まで見て、それからずっと見るのを忘れていて、先程また見直して今見終わった。というタイミングで書いている。あらすじはだいぶ大雑把に書いてますがお許しください。

 

 

 

あらすじ

賞金をかけられた女犯罪者を近場の街の刑務所へ送り、その女を絞首刑にし、賞金をもらうために、バウンティー・ハンターのオジちゃんが雪山の中を渡っている。

しかし吹雪が酷くなり、途中で出会った元軍人の黒人のオッサンと、保安官を名乗るオッサンを乗せる。元軍人のオッサンは「俺はリンカーンから手紙をもらったことがある」とホラを吹く。しばらくしてお客さんが多数いる近場の店に到着し、そこに避難する。

 

お客さんの中には南北戦争奴隷制度継続側の南部軍で戦った、白人の黒人嫌いのおじいちゃんがいて、何やら黒人とのオッサンと険悪な雰囲気になり、そこへ保安官が白人のおじいちゃんの側についてさらに邪険なムードになる。

しかし白人のおじいちゃんが堪らず拳銃を抜き、黒人を撃とうとするが先に撃たれてしまい死亡。さらに、険悪なムードになる。

 

そこからだいぶ話が進み、誰かがコーヒーに毒を入れたせいで、バウンティー・ハンターと馬引きのオッサンが毒殺されてしまう。

残るは元軍人、保安官、女犯罪者、オッサン3人。

しかしこのオッサン3人、全員共犯であった。女犯罪者がギャング団のボスの姉で、オッサンたちは女を救うためにやってきていたのだ。

保安官と元軍人でなんとか1人は殺すものの、実は地下室にもうひとり仲間が隠れており、ソイツに元軍人が金玉を吹き飛ばされ保安官は足に穴を開けられてしまう。

 

 

なんとか仲間1人と隠れてた仲間を殺し、残るは女犯罪者とその部下。女犯罪者は吹雪が止んだら自分のギャングの部下15人がここへ来てお前らを殺し、報復として街に行って大量虐殺してくると脅す。嫌なら保安官に黒人を殺せという。

取引に応じそうな雰囲気だったが結局応じず保安官はギャングを全員殺す。

この虐殺劇をなんとか最後の生き残りとして乗り切れた二人だったが、二人とも助けが来る前に出血多量で死んでしまい、そこで物語は終わる…

 

 

 

感想

この映画は基本的にずっとその店の中で物語が進んでいく。ほとんどがキャラクターたちの会話で成り立っている。後半の一部分を除けば。

それがこの監督(クエンティン・タランティーノ)が作る映画の特徴なのだが、人によっては「画面に動きがないからつまらない」って思う人も多いと思う。ただキャラクターたちが個性的で、興味深いという意味でも、笑えるという意味でも面白いキャラクターたちが揃っているので、そこらへんを楽しめれば全然苦にはならず、2時間半くらいあるこの映画を楽しめると思う。

思い出話なんかをしているシーンでも、実際の映像が流れながら語りが入るので、見やすいと言っちゃ見やすいと思う。

 

セリフの面白さ

この監督の映画はセリフの面白さでも有名だが、今回も面白かった。一応『キルビルVol.2』以外は全部見ている。先週公開された最新作も含めて。ただ見た時期がまばらなので、記憶の引き出しが少し悪い。

最後に地下に隠れていたギャングメンバーが穴から銃をほっぽり投げ、黒人が「もう一丁銃持ってるだろ!はやく出せ!」というと「もうもってないんだ!本当だよ!」って言われたときの返しが

「じゃあケツの穴からでもひねり出せ!」

しばらくして「出さねえとお前の妹を殺すぞ!3!2!1…」

するともう一丁の拳銃が穴から飛んできて、オッサンがニヤつきながら「言ったろ?(笑)」

こういうどうでもいいやり取りが好きなので、この人の映画は割と楽しんで見れている方だと思う。いい意味でしょうもないものが好きだ。ストーリーや演出の素晴らしさもいいが、細かいところでの面白さも好きだ。

 

人種差別の応酬

黒人のオッサンがひたすら白人のおじいちゃん差別用語(N*gger)で呼ばれまくったり、と思いきやその黒人がメキシコ人のおっさんを人種で罵ったり、お互いに好き勝手言い合ってる感じが面白かった。

人種差別的ジョークは好きだ。人種差別が好きなんじゃなくて、自分のある意味ネガティブだったり触れづらいことを進んでネタにしていくのが、なんか自由を感じて面白い。

この監督の映画にはそういうタブーに自ら積極的に触れていくキャラクターが多い(と思う)ので結構気楽に見れている気がする。

 

女犯罪者がヤバさ

女犯罪者だが、最初からずっと態度が悪く、口答えばっかしてはバウンティー・ハンターのオッサンにぶん殴られる。懲りたと思えば、次の瞬間また同じようなことをしてまたぶん殴られる。挙句の果てにはリンカーンからもらった手紙であろうものを馬車の外に投げてしまう。外は吹雪なのでもう飛んでいったら取り戻せない。んで怒り狂ったオッサンに殺されそうになるも平気な顔をしている。そこらへんのぶっ飛んでる感じが面白かった。

200年前とかの時代にはこういうメンタルをした人間が多かったのかなと思った。いまよりも死が身近だし、自由にやりたいことができる時代じゃなかったからストレスも多かったと思うし、より人間がどっちかというと動物的な本能を持っていた時代だと思う。そういう風に考えると、リアルでいそうだなって思った。メンタルが弱い人間なので羨ましいと思いながら見ていた。

 

 

最後の20分間くらいの流れが面白かった

今まで散々間抜け扱いをされてきて、現に間抜けみたいな行動を取っていた保安官が、最後の最後に犯人の女に取引を持ちかけられて、敵の取引に応じて悪者側に寝返ってしまった…と思いきや「取引は無効だ アバズレめ」と一蹴し、保安官らしく悪人を全員やっつけていく流れはカッコよくてよかった。

 

保安官が女を銃殺しようとしたら黒人が

「待て!この女はバウンティー・ハンターが生きて刑務所まで送り届け、絞首刑にしようとした女だ。つまり銃殺なんかじゃあなくて、もっと苦しい絞首で死ぬ予定だったんだ。俺らはどうせ死ぬ。だが一つ選択権がある。

 

どうやってこの女を苦しめ、ぶち殺すかだ」

 

友情物語的な流れで「女の命だけは助けようぜ。俺らも外道になる必要はない!」って言うのかと思ったら、予想の斜め上を行く回答で笑ってしまった。

そこからは二人はノリノリで女の首を釣り、途中で意識を失いかけるも「コイツの死ぬ瞬間を見るまでは死ねねえ!」と踏ん張る。

歩くのも辛い、動くのも辛いっていう二人が、最後の最後に女を持ち上げ、ロープに吊るし、それを死ぬまで持ち上げるって行為をするのが面白かった。どんだけ殺したいんだよ!ただどうせ死ぬということなので、火事場の馬鹿力でがんばれたんだろうなと思う。

 

そのまま二人は力が抜けて倒れ込み、眠りについてしまう…

おそらく保安官の頭の中では今までの人生の走馬灯が流れていただろう。そんな中である一つの出来事を思い出す。

「俺はリンカーンから手紙をもらったことがある」

すぐさま目が覚め「おい!リンカーンの手紙見せてくれよ」という。

黒人のオッサンももう死ぬ準備万全で天使の迎えを待っていたタイミングで急に話しかけられたから、死にかけてるのにも関わらず普通にビクッとビックリして起き上がり、しぶしぶ手紙を渡す。

そこから手紙を読むのだが、読み終えてから一言。

 

「お前、なかなかいい嘘話作るじゃねえか」

 

そのままカメラがフェードアウトし、大仕事を片付けたあとの一服みたいなBGMが流れるまま、スタッフロールが流れ出す。こういう演出は好きだ。あまりにも狙いすぎというか、わざとらしすぎるかもしれないけど、王道は王道だから面白い。

 

 

 

総括

最初は内容が内容なので面白くなさそうだと思ってた。舞台は屋内の一室のみだし、会話だけだろうし、2時間半くらいあるし。ただ実際見てみると先程言った細かい部分での面白さや、後半からの物語が急速に進んでいく展開と、予想を何重も裏切るのとで結構ワクワクしながら見れた。

まだ見てない人がいるとすればYouTubeなんかに切り抜きが上がってるので、雰囲気だけでも見て面白そうだったら見るといいと思う。長くて特殊な映画は人には勧めづらい。ただ普通に面白かった。

けれどこれを劇場で見ていたら、次回作にあまり期待はできなかったような気がする。「どうせ次回作はもっと王道から外れた、映画マニアにしか分からないような内容にするつもりなんだろ!」となってしまうから。ただ次回作は今回言ったような長所がさらに引き伸ばされていて増えているから面白かった。

あんまり予想せずに雰囲気だけで見に行ったほうが正解なときもあると思った。予想ってあまり当てにならないしね。